お知らせ

コープ自然派事業連合理事会として意見書を提出しました

2021年4月27日

内閣総理大臣 菅義偉殿
経済産業大臣 梶山弘志殿
水産庁長官  山口英彰殿
東京電力HD株式会社 代表執行役社長 小早川智明殿

東京電力福島第一原子力発電所ALPS処理汚染水の海洋放出に断固反対します

日本政府は、東京電力福島第一原子力発電所ALPS処理汚染水の海洋放出を決定しました。日本政府・東京電力は、これまで「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と地元住民に説明してきました。4月7日には海を生業の場とする人々を代表して全漁連岸会長と福島県漁連野崎会長は、「反対の考えはいささかも変わるものではない」と菅首相に直接訴えました。国の約束を信じ、廃炉の為と、地下水バイパス、サブドレンで汲み上げた汚染水の海洋放出という苦渋の選択などの協力をし、血のにじむ努力を重ねてきた10年の想いを聞いた、その翌日に、あろうことか、菅首相は「貯蔵タンクも2年後に満杯となり、汚染水処理の決定をこれ以上、先延ばしできない。また福島第一原発の廃炉を完了するためには、汚染水を速やかに処理しなければならない」と海洋放出を発表しました。

汚染水に含まれる放射性物質はALPS処理を行っても、トリチウムだけは取り除くことはできません。また、ALPS処理したトリチウム汚染水の7割には、トリチウムのみならず、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が、総量として基準を上回って残留しています。東京電力は「二次処理する」と言っていますが、その総量はいまだ公表されていません。

仮にトリチウム以外の核種が除去できたとしても、トリチウムの毒性について、科学的知見がさまざまであることについてもきちんと検討されていません。一般的には「トリチウムの放射線は微弱で無視できる」と言いますが、微弱とはいえ、「生命体の分子結合のエネルギーに比べれば1万倍近いパワー」と専門家は指摘します。体内に取り込まれ、「有機結合型トリチウム」という化合物になって、付着すればDNAを破壊する恐れがあります。また低線量被ばくの健康への影響をめぐる議論は決着していません。

世界中の核施設の周辺で、健康被害の報告が後を絶ちません。マスコミは海外の核施設は、トリチウムを含んだ大量の水を、海や川に放流していると政府の決定をあと押しするように報道しています。しかし、健康被害についての検証もせずに、「海外が行っているから安全」というのは科学的判断ではありません。この機会に、海外の核施設周辺の実態調査を行うべきだと考えます。

さらに熊本、新潟両県の水俣病9団体などでつくる「水俣病被害者・支援者連絡会」は反対声明を発表し、水銀を含む工場排水の海や川への放水が水俣病の原因になったことを踏まえ、「同じ過ちを繰り返そうとしている」と抗議しています。希釈してもトリチウムの総量は減るわけではありません。水俣病で、食物連鎖による生体濃縮でメチル水銀が人体に影響を及ぼした事実を私たちは忘れません。

この間、水産庁においては、幣会に対して、風評被害防止を理由に、商品案内の記述訂正を求めてきました。記述訂正に至るまでのやりとりの中では、汚染水問題の本質についての十分な説明がなされていないと感じています。

今回の処理汚染水の海洋放出においても、漁業者だけでなく、多くの消費者の強い反対の声を無視した判断であり、風評被害ではなく、海洋汚染を招くという事実をないがしろにしています。

海洋放出以外の代替案として、技術者や研究者のグループから「大型タンクによる長期安定保管」や「モルタル固化処分」といった提案がなされています。また近畿大学は、放射性物質を含んだ汚染水からトリチウムを分離・回収する方法および装置を開発した、と発表しています。これらについての検討を強く求めます。

福島県では59市町村のうち41市町村議会が、海洋放出へ反対もしくは慎重な意見書や決議を可決しました。また、経産省が行ったパブリック・コメントには4000件を超える意見が寄せられていますが、開示請求により公開されたもののうち7割が放出に反対する意見です。福島県内の団体が呼びかけて実施し経産省に提出された海洋放出に反対の署名は42万筆を超えています。これだけの声を無視する政府を、誰が信頼できるでしょうか。民主主義の崩壊と言えます。

私たちは、次世代に引き継ぐ環境を守り、海の恵みを安心していただくことのできる未来を望みます。現世代を生きる一人の人間として、処理汚染水を海洋放出することに断固反対します。放射性物質は集中管理をすることが原則です。拡散させてはなりません。

生活協同組合連合会コープ自然派事業連合理事会