第9回 今井澄さんと介護保険法の成立
2025/11/17
高度経済成長期を経た日本では急速に高齢化が進んでいった。それに対して社会的弱者や生活困窮者対象の「措置制度」による特別養護老人ホームや老人保健施設などはあったが、これではとても追いつかない。高齢者介護の社会保険化を目指して準備されたのが介護保険法だった。法律の議論が始まったのは1990年代の半ば、1997年に成立し2000年から施行された。
同じ頃、創立時からの組合員で生協の風呂を利用していた人たちも高齢化が進み、泉南の地で最期を迎えたいから何とかならんかという声が次々と理事会に届くようになっていた。介護保険法の審議に関する情報は国会議員だった今井さんから人を介して笠原の元に届いていたので、これを生かす方法は無いかと考える日々が続いた。
介護サービスについては、何度もホームヘルパー養成講座を開催したが「終の住まい」をどうすればいいかが浮かばない。もちろん条文にそんなことは一切書かれていない。世間にあるのは前述のような「施設」ばかり。何より欲しいのは「自由」だ、年老いたからといってあれこれ制限されるのは嫌だという意見が相次いだ。そんな議論を重ねた末に理事会が出した結論は「自宅と同じ様に生活できて、介護や医療のサービスがついた住まいを建てる」だった。
今井澄(いまいきよし)さん
医師、長野県茅野市にある諏訪中央病院に勤務し40歳から院長を務めた。1988年に鎌田實氏に院長職を譲り、当人は1992年参議院議員に当選。決算委員長、厚生委員長などを歴任した。若くして亡くなったのでお会いできなかったが、その後、鎌田さんには岸和田まで講演に来ていただいた。

