第12回 全国でたったひとつ 「住宅事業」ができる生協に
2025/12/8
型破りの老人ホーム「みのり」にはマスコミの取材が相次いだ。それに加えて組合員の「口コミ」もあって開設からずっと満室状態。空き室がでたら連絡してくれと言う人も現れた。そして「〇〇さんからここはいい所だと聞いて・・・」「こちらは寝たきりになっても追い出されないと聞いたんですが・・・」「酒を飲めるってホントか?」などの問い合わせも続いた。事業として十分成り立つ!自信を得た理事会はオレンジコープの全エリアに「みのり」を展開すると決めて建設を進めた。阪南市二期棟、貝塚市、和歌山市、堺市と次々に竣工。2007年には部屋数が200室を超えた。
その頃、介護保険の給付費は右肩上がりで急増していた。そんな給付費を抑えるために2006年に介護保険制度改革関連法が施行される。その中には介護付き有料老人ホームの新設を認めないことも含まれていた。すでに用地を購入していた所もあったらしく全国の事業者は大混乱に陥った。
我々もせっかく立ち上げた新しい事業ができなくなると頭を抱えてしまった。あちこちから情報を集め、日夜議論を重ねた。その結果、出した結論は「賃貸」だから規制対象になるが「分譲」したら只のマンションじゃないか、ということだった。
もちろん「みのり」にあるサービスは全部つけるのが大前提。介護保険事業所、大浴場、食堂などを共用部に配置し、医師や歯科医師の訪問診療も実施する。ハードルは消費生活協同組合法では分譲マンションが「住宅事業」に分類されること。この時期に「住宅事業」の認可を持っている生協はどこにも無かった。バブルが弾けたときにみんな潰れてしまったのだ。大阪府に実績と事情を説明して諒解してもらい、全国でたったひとつ「住宅事業」ができる生協になった。

