• 地域循環(循環型農畜産業)

家畜を育てるためには必ずえさが必要です。しかし、日本の飼料自給率は26%と低く、ほとんどを輸入に依存しています。経営コストに占める飼料費の割合は高く、家畜の種類にもよりますが約3割から6割(※)にもなるため、海外情勢や為替などにより大きく左右されてしまいます。

安定的で持続可能な畜産を推進していくためには、国産自給飼料など地域の資源を活用していくことが大切です。今回は地域の資源を有効活用しながら畜産に取り組む生産者を紹介します。

※農林水産省「飼料をめぐる情勢」参照

えさは大きくわけて「粗飼料」と「濃飼料」の2種類に分けられます。

 粗飼料 

草、または草を刈り取って乾燥させたものや、発酵(サイレージ)させたもののこと。イネ科やマメ科の植物が該当します。

 濃厚飼料 

トウモロコシ、大豆、綿実、麦など、粗飼料に比べてタンパク質や炭水化物などの栄養素を多く含むえさのことです。

畜種別の食料自給率

※令和4年度概算

北十勝ファーム

放牧で牛を飼うことは土壌炭素蓄積量を増やし、温室効果ガスを削減できるという研究報告があります。放牧はそこに生える牧草をそのまま牛が食べてくれるのですから地域資源を活用する最たるものですね。

さらに今年は、数年前から試験栽培をしてきたタンパク質含量の多いマメ科牧草を活用、町内の畑作農家と連携して飼料用トウモロコシの作付を増やし、冬季の飼料の8割を自家産・町内産で賄う計画です。牛は胃に大地を抱えて生きています。私たちヒトが消化しにくい草を資源に、タンパク質を私たちにもたらしてくれます。私は、牛を通じて地球につながっていると感じます。

北十勝ファーム 上田七加

飼料用トウモロコシ

北海道短角牛ミンチ3mm

  

ネックスネ等の味わい深い部位を中心に挽肉に加工しました。

イシイフーズ

放牧神山鶏は鶏舎の横に同じ広さの運動場を併設

山あいにある私の農場では、放牧できる場所を設けた鶏舎で放牧神山鶏を飼育しています。そして健康で元気なニワトリを育てるためにこだわりの飼料を与えています。

こだわりの飼料に国産飼料用米があります。お米を食べて健康に育った神山鶏の鶏ふんは、鶏ふん堆肥となってお米や野菜などの圃場(水田、畑)に還元されています。地域の田んぼの環境保全や食料自給率の向上など、また生物多様性の保護などに結び付き、地域循環型農業や持続可能な農業の推進につながっています。

国産飼料用米で育てた神山鶏は、コクとうまみを感じる美味しい鶏肉に仕上がっていると思いますので、ぜひお召し上がりください。

イシイフーズ 川村忠雄

放牧神山鶏ムネ肉

  

やわらかく、ヘルシーなムネ肉です。

七星食品

七星食品の所有する肥育農場では、飼育環境にバイオベッド方式を採用しており、飼育する豚はもっとも自然に近い環境で、のびのびと生活を送っています。

バイオベッドを作る上で必要な敷料堆肥には、豚のふん尿に籾殻(米を包む殻)やおが屑を混ぜ合わせて発酵させたものを使用しています。籾殻とおが屑のどちらも敷料堆肥作りには欠かせないため、年間を通して農場へ供給してもらえるように、地域で活動している材木店や精米店に協力していただいています。籾殻やおが屑を使用して作った敷料堆肥で豚を飼育し、田畑への有機堆肥として還元することで地域資源を活用した循環サイクルが実現していると感じられます。

七星食品 海部哲央

飼料米を配合したえさ
敷料堆肥

自然豚モモスライス

  

キメの細かな赤身肉。肉そのものの味を楽しむ料理に向いています。

旭商事

鶏たちは自由に動き回れます

平飼い飼育の敷料に必要な「籾殻」や「おが屑」は地域の生産者や製材所から仕入れて使用しています。鶏ふんは堆肥にしたり、燃やして発電する事業に使用したりします。飼料については飼料原料のほとんどを海外依存していますが、飼料米(玄米等)を一部活用して少しずつ国産原料へ方向転換したいと思います。

しかし採卵鶏は飼養期間が肉用鶏よりもうんと長く、えさを米へ置き換えることが容易ではないこと、飼料用米の補助金制度の見直しにより入手しづらくなるなど、ハードルは高くなりそうです。

旭商事 山根浩敬

鶏のえさ

PHF平飼い卵 6個

  

PHF、非遺伝子組み換え(分別管理)飼料を使用し、飼料米を配合した平飼い卵です。

さかうえ

全国共通の課題である耕作放棄地や中山間地域※の休耕地を牧場として有効活用し、黒毛和牛(里山牛)を放牧飼育しています。牛たちは牧草だけでなく、自社で生産した飼料(非遺伝子組み換え(分別管理))を食べて、のびのびと健やかに過ごしています。

国内全体の飼料自給率が26%に対して、さかうえでは100%自社産の飼料を里山牛に給餌することで、輸入飼料に頼らない飼育体制を確立しています。

今後も地域資源を最大限に活用し、国産飼料自給率向上等の課題解決に挑戦していきます。また、自然・人・牛に優しい里山牛の取組を通じて、持続可能な畜産事業を展開し、自然の豊かさをお届けします。

さかうえ 日髙裕介

※中山間地域とは、山間地およびその周辺の地域、そのほか地理的条件が悪く農業をするのに不利な地域のこと。

  

さかうえで生産している飼料

里山牛ホルモンミックス

  

内臓も臭みが少なく、おいしく召し上がっていただけます

大野ファーム

以前より大野ファーム自家生産の牧草やトウモロコシなど地域資源をできるだけ使用し、長期的に生産を継続できるよう飼料自給率を上げる取組を行ってきました。

  

農場で処理・生産された堆肥を大野ファームの農場をはじめ地域内で利用し、より良い土作りから始まる循環型農業を行っています。「健康」な土壌で作られた「健康」な農産物・飼料原料を与えることにより、「健康」な牛の生産にこれからも取り組みます。また、CO2排出量削減に向けたカーボンニュートラルを目指し、地域環境を守る取組の一つとしても太陽光発電やバイオガス発電等、再生可能エネルギーを活用しています。

  

大野ファーム 大野泰裕

未来とかち牛肩ロースすき焼き用

  

脂と赤身のバランスの良い肩ロースを、すき焼き用にスライスしました。

公開:2024年1月29日
商品案内46号[2024年2月2回]掲載

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