全ての工程を杜氏の手作業で行う 茨木酒造

2022/9/14

訪問日:2022年9月14日
訪問者:コープ自然派商品部 山田

今回は、コープ自然派兵庫の学習会に商品部の山田が同行し、9代目である茨木幹人(みきひと)さんにお話を伺いました。

■酒造りに適した歴史ある蔵

茨木酒造は、1848年(江戸末期)創業。江戸末期から現存する蔵は、兵庫県登録有形文化財に指定されており、この建物は気温が低く、風通しの良い場所を良しとする酒造りに適した『北流れ』という造りになっています。残暑の厳しい日でしたが、酒蔵だけはぐっと涼しく、北流れの風通しの良さを体感しました。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
茨木酒造 9代目 茨木幹人さん

■随所に感じる茨木酒造のこだわり

1.原材料
茨木酒造の日本酒の原料は、シンプルに米・水・米麹 (デンプンを糖に変える働きを持つカビ菌)・酵母菌 (糖を分解してアルコール発酵させる菌)のみ。

 …明石市といえば山田錦の生まれた地。その山田錦と五百万石という品種のお米をメインに使用。そのお米を作る田んぼに張る水と、お酒に使う水は同じ六甲山系の水を使用するというこだわりも。
コープ自然派オリジナルの2商品には、ツルをよぶお米(省農薬)と丹波市婦木農場の酒造好適米「兵庫北錦」をそれぞれ使用しています。

酵母菌 …日本酒の味わいを左右するのは、お米よりも酵母。東京農業大学 醸造学科での学びを活かし、アベリアや月下美人などの花酵母を使った日本酒も造っています。酵母によって、洋ナシや青りんごの香りがひろがり、仕込みの時期になると蔵はフルーティな香りでいっぱいになるそう。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
日本の国菌である麹
生産者訪問レポート(茨木酒造)
様々な種類を使い分ける酵母菌

2.製造・設備

洗米 …10kgずつ袋にわけて、手作業で行っています。同じ米品種であっても農家が違えば水分量も異なるため、10kgずつわけることで水分の調整がしやすく、一定に保つことでその後の作業もスムーズに。酒の仕上がりを左右する温度・水分・栄養の中でも、水分のコントロールが一番大事だと話されていました。

生産者訪問レポート(茨木酒造)

搾り …米に麹をまぶし、酵母と水を加えて醪(もろみ)をつくった後、搾りの作業になります。様々な方法がありますが、茨木酒造で使われているのは自動のろ過圧搾機。アコーディオンのようなじゃばらの形になっていて、中を通る酒のもろみを、酒粕と液体に分けます。
驚いたのは、間近で見ても新品なのではないかというほど綺麗なこと。
醪がはじめて出会うのがこの搾りの機械。だからこそ、使用するたびにパーツを分解し、臭いうつりがないよう清潔に保っているとのこと。茨木さんのお酒造りへの細かな配慮には、実直にお酒と向き合う心意気が反映されているように感じました。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
搾りの作業で使用するろ過圧搾機

瓶詰 …最終工程である瓶詰も、掃除しやすさを重視した機械を使用されています。洗米から瓶詰・ラベル貼りまで、手作業で丁寧に行う小仕込み。だからこそ、品質の高いお酒が出来上がります。

■お酒について

茨木酒造の代表銘柄である「来樂」は、孔子の論語にある「朋(とも)あり遠方より来たる、また楽しからずや」の一節に由来。人生最高の楽しみである友と酒を酌み交わす歓談の場にある酒であるようにとの願いからつけられたそう。また、「来樂」は左右対称で、「裏表がない」縁起の良い名前でもあります。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
正面入り口を入ってすぐ、ずらりと並ぶ「来楽」

茨木さん自らにお酒を注いでいただき、みんなで試飲しました。
最初にいただいたのは、来樂の純米生原酒。しっかりとした味わいながら、飲み飽きずにぐいぐい飲めてしまい、芳醇な米の甘みを感じます。その他も、種類ごとに味わいや香りのバラエティが豊か。お酒に合わせて献立を考える楽しみも語ってくれました。

生産者訪問レポート(茨木酒造)

■酒造りにとどまらない活動やイベントも

仕込みの会 …酒米の田植えから稲刈り、仕込み、酒搾りまで、日本酒造りを体験してもらう会を行っています。田植えを行う田んぼは蔵のすぐ横に。
BLOF理論に感化され、有機米栽培をはじめて3年目。「見事な稲に育つと実感しており、病気や害虫被害はないけれど、わさわさと育ちすぎてスズメが食べに来てしまう」と笑顔で話されていました。

                  
奈良漬けの会 …塩漬けしていたウリに酒粕と砂糖を混ぜて、参加者自身が漬ける会。
丁度1回目が終わったばかりで、酒蔵にはたくさんの漬け樽が並んでいました。

その他にも落語家を招いて「酒蔵寄席」を行ったり、フリースペースで「蕎麦の会」を行ったり、地域とのつながりを大切にされています。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
BLOF理論で米を栽培している田んぼ
生産者訪問レポート(茨木酒造)
奈良漬けの樽が並ぶ酒蔵

最後になりますが、ご紹介したお酒の製造は、なんと杜氏である茨木さんともう一名のみの少数精鋭で行っています。工程ごとに人員をわけて製造する蔵も多い中、洗米から瓶詰まですべて一貫管理。ひとつずつに目を配ることで品質を維持し、製品に対して責任を持って造り上げています。
私自身、蔵を訪問してから毎日の晩酌としておちょこ一杯のお酒を嗜むようになりました。手間暇を惜しまずつくられた日本酒を、皆さんも毎日の労いの一杯にいかがでしょうか。

生産者訪問レポート(茨木酒造)
茨木さん、コープ自然派兵庫の皆さんと

茨木酒造の商品

茨木酒造 PURE junmai

ツルをよぶお米(省農薬)を使用。日本酒は好きだけど何を選んだら良いか分からないビギナーの方や、くどくない甘口を好まれる方におすすめです。
精米歩合:75%
アルコール度:15度
味わい:甘口
飲み方:冷〇・燗〇 


来樂 婦木農場 純米酒 生原酒

婦木農場(丹波)の酒米「兵庫北錦」を使用。口に含むとしっかりとした味わいがありながらすべりが良く、飲み飽きしないタイプです。
精米歩合:65%
アルコール度:16度
味わい:ほんのり甘口 
飲み方:常温〇・冷酒◎・オンザロック〇


茨木酒造が造る料理酒 ツルをよぶ純米料理酒

ツルをよぶお米(省農薬)を使用。通常より多くの麹を使い旨みを引き出し、発酵途中に甘酒を加える事で、お米の優しい甘さをプラスしています。

商品のご注文は「自然派オンライン」からどうぞ

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